今回は、楽曲アレンジの工程で、主にエレクトロ・EDM・一部のデジタル系ポップスの曲で行われる『シンセサイザーエディット』について取り上げます。
『midi上(長さ・はもり)エディットやレイヤー』『特定周期で揺らす』『ベンドやパラメーター時間的変化を取り入れた効果音』と、3パターン取り上げてみます。さっそく確認していきましょう。
パターン1:シンセリフやメインテーマを、midi上(長さ・はもり)エディットやレイヤーで目立つように
シンセメロメインテーマ・もとの状態
以前作って、サウンドクラウドや、著作権フリー曲サイトSSFに上げてた楽曲です。futurehouseやglitch・エレクトロみたいなのを想定しました。イントロとかに使うメインテーマはこんな感じ。後半のドロップがガッツリ盛り上がる予定でしたが、この段階では特筆することもなく普通です。
フレーズをハモり(3度とか)やオクターブなどに変える
単音でも数パートレイヤー(1個はオクターブ落とし)してますけど、それをさらにオクターブや3度とかで強化。これで厚みを出します。海外アーティストでは、4オクターブ重ねたりとか、レイヤーしたりで、プリセットを単音で弾いたときより、厚みが出るようにしていました。
休符や、微妙に音符の長さを変える、竿もの楽器の空ピックみたいに短くする
最初のバージョンではベタうちでしたが、休符や、微妙に長さを変える・空ピックやゴースト音のように、極端に短いものをいれるなどして、表情をつけていきます。休符が入ると歯切れが良くなりますし、短いものはパーカッシブに聴こえます。
別の種類の音源をレイヤーする
もともとのフレーズは、単純にパルス派とかいろいろ重ねただけでシンプルだったんですが、後半のビルドアップ後に盛り上がるメインテーマでは、reactorの厚めシンセサイザーパッチ・roundsも同じフレーズでレイヤー。別系統の音源重ねるのも、厚い出音にするコツです。場合によってはデチューンなども使っていきます。
エディット後の曲内で使ってみた状態
https://www.youtube.com/watch?v=amk9Ui6ReF4
完成後のオーディオデータは、こんな感じになりました、というデータです。SSFのyoutubeに乗せています。後半ドロップ部分(1:26~)が、特に暑い感じに。初期の単音メロディよりは厚くなった上に、キレも上がったと思います。
特定周期で揺らす(filter gateエフェクター)
そういえば、『ワブルサウンド』のwobbleとは、ぐらぐら、ゆれるなどの意味だそうです。少し前にfuture bassが流行りましたが(管理人はあんまり飛びつきませんでした)、future bassをはじめとしたエレクトロジャンルでは、揺れるシンセサイザーサウンドがよく使われました。本体LFOを使う人も多いですが、ここではエフェクターで揺らします。
元の状態(シンプルだけど、ジャンルによっては動きが欲しい)
フレーズは、上記のオーディオデータのようにしました。waveracerがこういうのやってた気がしました。シンプルだけど、ジャンルによっては動きが欲しい感じです(The Chainsmokers等は、シンプル系の曲ではこんな感じのまま出したりしています)。すこしギラギラさせるために、ギター用プリのプラグインで3KHzあたりをすこし上げたりしました。
filter gateを、オートメーションで混ぜ具合変化させながら
エディット性が高いシンセサイザーなら、単体でできるので使わなくて良いんですけど、今回は外部エフェクタで。 16分音符周期で揺らす(note)・バンドパスフィルター(ハイパスだと薄くなります)・モジュレーションLFOなどを設定。同じ周期で揺れるという効果がでます。
オートメーションで混ぜ具合(mix)を変化させます。16分とか8分の周期でかけっぱなしにしてもいいんですけど、少しずつかかる量が変わったりといった時間的な変化があっても楽しめます。
つなぎのAコードのところだけエフェクトoffとかは狙ってます。セクションに応じてかかり方を変えるというアレンジも効果的。ベース音などをゆらしまくるとダブステップぽくなります。
時間的変化かつ、大きめの音程変化・揺れを伴った効果音(Digidesign/air Vacume)
シンセサイザーアレンジパターンとしては、フレーズやメロディを弾くほかに『効果音』という手もあります。EDM系では、セクションに応じて出てきたりすると非常に盛り上がる、重要なパートです。
利用する音源→いまどき使ってる人いるのか不明な、Digidesign/air Vacume
で、こちらが効果音に使う音源。pro toolsについてきた『Digidesign/air Vacume』といいます。すでにavidに買収されてからしばらくたってたので、『Digidesign』というフレーズを、久々に聞く人も多いのではないでしょうか。
旧式で『使えんのか?』という感じですが、パラメータが豊富なうえ、『ピッチベンドレンジが24と広い』という特徴があります。下準備としてこれをmaxまで振っておきます。
フレーズ例→ほぼ単音
この段落のフレーズ例です。単音で伸ばすとか、単音で一瞬出るとか、非常にシンプルなフレーズになっています。これだけだとはっきり言って効果音にならないので、いくつかのパラメーターを時間的変化を伴って動かす必要があるわけです。
パラメーター操作例(モジュレーション・ボリューム・ピッチ)
こちらが、上記のショボフレーズに対して適応させたパラメーターです。前半はモジュレーションで音をぐにゃぐにゃ揺らすんですけど、音程が広いレンジで下がりながらだんだん収まりつつ、フェードアウトといった動き。中盤ではライザー音が入り、上がりながら最高値あたりで、また音が揺れます。
中盤はバウンス調の曲調になりますが、そこに入るとき、音程は24を急激に落とします。そのあとはテンポに合わせて掛けたり掛けなかったりという変化に。
利用例(著作権フリー曲サイト・EDMに使用)
https://www.youtube.com/watch?v=izT8C9_gRuo
上記のアイデアで、単音のDigidesign/air Vacumeシンセサイザー音を動かしたところ、こんな感じになります。効果音は3~4パートありますが、音程変化などが激しくて目立つのが、上記のエディットした部分になります。
あとがき・まとめ
というわけで大きく3パターンを見てきました。EDM・エレクトロ系の世界的なブームは沈静化したとはいえ、クラブだったり、デジタル系アーティスト・動画などでは、まだまだニーズはあるといえますので、押さえておくとよいでしょう。。